私の県立高校は1学年400人で、男300人、女性100人の共学の学校でした。
共学といってもクラスは男女ともバラバラでした。
アイドルのTさんはいつもWさんと一緒に学校に通ってきました。
その立ち姿はすらりとして、髪はポニーテールで、いつもそれをゆらゆらとなびかせて歩いていました。
その姿は大人びていて、私たち男子の憧れでした。
なにをどうしようという下心があったわけではありません。
ただお友達になれたらいいなあというくらいの気持ちでした。
いつも遠くから眺めていたのにすぎません。
これが何回目かの片思いなのでしょう。
ただ修学旅行のときに写真を撮ったくらいです。
その後は卒業してバラバラになってしまいました。
その後、定年になり、クラス会の有志で温泉学会と称して、数名で温泉に行っていました。
伊豆長岡に行くときに、友人のAさんが途中でSさんの所に寄って行こうかと。
何でもSさんとは高校時代のソフトボールで一緒で、今度画廊を開いたから、こっちに来ることがあったら、
よってくださいとの葉書をもらったとか。
伊豆長岡に行く途中だからどうだろうかと。
皆寄って行くことに賛成しました。
そこで長岡駅の上の方の住宅街の中のSさんの画廊に寄りました。
65歳を過ぎて、画廊を開いたことに皆、賞賛しました。
そしたら、なんとあのTさんが来ていたのです。
これには驚きましたね。
そこでコーヒーをご馳走になり、Sさんの話です。
前から絵には興味を持っていて、年取ったら画廊兼喫茶店みたいなことをやりたいと思っていたとか。
このたび旦那さんの承諾を得て、画廊を開いたのだと。
沼津の女流画家を応援しているのだと。
たまには売れますよとのことでした。
Tさんとは、Sさんの旦那さんのお兄さんと見合いして結婚したとのこと。
SさんとTさんは義理の姉妹になったとか。
判らないものですね。
そこで今日我々が来るとのことで、Tさんを呼んだのだと。
SさんもTさんも立派な品のいいおばあちゃんになっていました。
こちらも爺さんですから、お互い様ですね。
そこでTさんに、昔は私たち男子学生のアイドルだったのですよといいました。
Tさんもうすうすは気がついていたとか。
その後、皆で海の方の料理屋で昼食を取って、昔話に花が咲きました。
その後我々は伊豆長岡温泉に行きました。
その夜の話で、皆会わない方が良かったとか。
昔のイメージが崩れてしまったとか。
これが皆の偽らざる心境でした。